川島むーのお茶祭り日記

お茶祭り企画代表、川島むーの心に映り行くよしなし事を、あれこれと

本を読むということ

 一昨日は、朗読教室の日。最近、喘息がひどくて落ち込み気味のM女史のために先生が用意されたのは、彼女が好きな『源氏物語』。「若紫」を原文と瀬戸内版とで読む。
 そうか、と気がついたこと。学生時代に古文を声に出して読む時は、全体を古文調で読んでいた。でも、台詞の部分までそれで読むことはなかったんだよなぁ。幼い姫君の拗ねるようなしゃべりで読んでよかったんだよなぁ。芝居っけたっぷりに読む古典。うん、楽しそう。『徒然草』とか読み直してみようかな。
 
 教室は、話題が次々に広がるので面白い。『源氏物語』のどの女性が好きか、生霊の話、末摘花を描いた紫式部の心理は?肝心の朗読をそっちのけで盛り上がるのだ。ちなみに私が好きなのは、子供の頃は夕顔だったけど、今は末摘花。

 古典つながりで、過日のテレビ番組で定家の書が出たと言う話でも盛り上がる。私も嬉しそうに、博物館学で聞いた古文書にまつわるトリビア話なんぞを披露したりする。

 ふと、M女史が「先生のところにもあるんとちがいます?」うちにはそんなええモン無いよ、と答える先生。しかし…。
 実は、先生の父上は「鐘の鳴る丘」のナレーションなどで有名だった方。M女史は先生の父上にもお世話になったというつながりなのだ。百貨店の書籍売り場にいた彼女。戦後、誰もが活字を求めていた時代、リーダーズダイジェストの日本語版が始めて発売された日、いかに人が押しかけたかを語り始める。その列の中にI先生(父上先生)を見つけて、あわてて今日は無理ですよと声をかけた、などという話も。そして、I先生は当時の貴重な本を買われている筈、と。物資も少ない時代の本は、確かに骨董的価値があるのかも。はてさて、もう処分されてしまっているのではないかしらね。

 この世代の方の貴重なお話が聞けるのが、この教室のいいところ。女性向けの雑誌が出たときの話。少女のように語る彼女は、あら?今日は喘息出ませんでしたね。

 本の力はすごい。ちょうど、今日のNHKでは『本を読む女』(再)の最終回。戦後の闇市で、本が飛ぶように売れていく。「お腹がすいているだけじゃない、心も飢えているのだ」という台詞が心に残る。主演女優さんがあまり好きではなかったので見ていなかったドラマだけど、偶然見た、この最終回のシーン、良かったな。