明け方まどろむ夢の中
ブーンブーンブブーン
携帯電話の音がする
ぼんやり目覚めた耳元で
ブブブーンブーン
おい、音おかしいぞ
近すぎるし
首をひねって見えたのは
甲虫の硬い羽が開いた後ろ姿
その下の柔らかい羽が震える
ブーンブーンブブーン
ひあ〜〜っ
あらぬ悲鳴に虫は驚き飛び立ち
ガラスにばしっ!
慌てて眼鏡をかけて探してみるが
姿が見えぬ
奴はいったい何者だった?
カナブン?
それとも茶色い羽の?
いやあ〜〜っ
ざわめく気分で仕事に出かけ
不安な気持ちで帰り着いた家の中
窓枠にしがみつく
カナブン一匹
やれやれ
ゴ○○リでなかったことには、ほっとする
そっと窓開けつまみ出す
ブーン
闇に消え行く羽の音
まったく
私の唇を奪いに来るとは
虫けらの分際で生意気な
などと呟きながら夢の中
翌朝
玄関先で見つけたのは
心配そうに家の中を窺う
カナブン3匹
ブブブーンブーン
耳を澄ませば
ブーンオヤブーンオヤブーン
なんと言うことだ
昨夜追い出したのはカナブン親分だったらしい
居並ぶのはカナブン子分その1その2その3
しまった!
カナブン界の
姐さんになりそこねた
放り出したのはまずかったか?
いやいや
一宿一吻の恩義を感じ
何かあったときには一度だけ
手助けしてはくれまいか
夏の夜の夢
虫のいいお願い