溜まっている録画番組あれこれ。見て過ごす一日。
NHKでやっていた、沢木耕太郎推理ドキュメント「運命の一枚〜“戦場”写真 最大の謎」を見る。
戦場カメラマン、ロバート・キャパの「崩れ落ちる兵士」の謎に迫ると言うもの。
ロバート・キャパと言うのがアンドレ・フリードマンと恋人ゲルダ・タローの二人によって創り出された架空の写真家であったこと。後に、ゲルダが亡くなり、アンドレ・フリードマンがロバート・キャパとして活躍している、と言う話は聞いていたのだが……。
そうだったの?見終って、いささか重たい気持ちになる。
あの写真がどうやら戦場で撮られたものではない事、兵士は撃たれたのではなく滑っただけ、しかも、撮ったのはゲルダであったらしい事。
その写真が世界で反響を呼び、反ファシズムのシンボルとなった事、更に、ゲルダが戦線でなくなった事。
ユダヤ人として反ファシズムのために写真を撮ろうとしていた、写真で戦おうとしていたアンドレ・フリードマン=ロバート・キャパは、故に、真実を語ることが出来なかった。
語ることの出来ない十字架を背負った彼は「崩れ落ちる兵士」について口をつぐみ(この作品のネガは見つかっていない)、真に戦場カメラマンとなるべく最前線に飛び込み、ノルマンディ上陸作戦等を撮影。最期はベトナムで地雷の犠牲となる。
そうだったの?
あまりにも、重い。
たった一枚の写真の嘘が多くの人の心を動かし、同時に一人の青年の運命を変えていった。その写真の嘘が、後に多くの戦場カメラマン・戦場ジャーナリストを産んでもいる。真実を語らなかった事が産んだ真実。