川島むーのお茶祭り日記

お茶祭り企画代表、川島むーの心に映り行くよしなし事を、あれこれと

無題

 かつての勤務先には、年に一回くらいは、やんごとなきお方が来られていた。海外に行かれる前に現地のことを学ばれたり。
 そのご一家が来られたのは、お姉ちゃんが小学生になった頃だったか。黒塗りの車のうしろのファミリー向けワンボックスカーからぴょこりと降りてきた姉妹。幼い妹は無邪気に笑顔を振りまいていたが、お姉ちゃんの顔がこわばっていると感じた。テレビで報道される姿とは少し違っていて、どこか、こちらを警戒するような。
「ああ、気付いてしまったんだな」と思った。学校のお友達と自分の違い。「可愛い~」と手を振って見せるそこにいる大人たちが、表面的な自分達を見ているだけだと言うこと。いや、それはあくまで私が感じただけなのだが、なんか、そんな風に感じるこわばり方だったんだよな。
 成長してからも、あの口角をぎゅっと引き上げた笑顔が苦しそうだなと感じていた。心の内を隠すために、どんな時でも笑顔に見えるように、そんな表情に思えた。
 自分で選んだわけではなく、そしてそれ以外の生き方をしている人たちの情報はいくらでも入ってくる現代。けれど、そこから抜け出す方法など誰も教えてはくれない環境(そんなことを調べようとしたら、すぐばれるよな)。
 なんだかなぁ。そんなに追い詰めてどうするんだよと思ってしまう。