川島むーのお茶祭り日記

お茶祭り企画代表、川島むーの心に映り行くよしなし事を、あれこれと

昨日は野田地図

 相方と二人でシアターBRAVA!へ。野田地図『贋作・罪と罰』。いつも深夜帰宅の相方が間に合うのかと心配だったが、静かに抜けてきたようで、無事に二人並んで観劇。
 やっぱり、私は野田芝居が好きなんだなぁ、と思う。日常にいそうな人間が、ありえない状況に追い込まれていく姿を描く三谷芝居も好きだけど、ありえないような人物や設定が、確かな存在感を持って迫ってくる野田芝居の魅力はたまらない。膨大な台詞。その一つ一つの意味が分かるとか分からないではなく、その響きが確かに心に届き、響き、気がつけば、スコン、とはまって来る。いいなぁ。
 で、ちょっと悔しくもあるわけだ。そこには、私が目指していた形の一つがある。舞台の作り方、役者のありよう。客席にいる自分…。

 今回の作品、実は初演も観ている。約十年前、東京で修行中だった。遠距離恋愛中の彼(今の相方)とコクーンで観たのは、主演が大竹しのぶだった。あの時はいまひとつしっくりこないものがあったのだが、今回は、素直に観れた。その違いは何だろう。演出の違い、役者の違い、私が変わった?家に帰って戯曲集を確認しているうちに、他の作品にも目が行き読みふける。大竹しのぶの為に書かれた『売り言葉』が、いい。生では観れず、テレビ放送で観た作品。今も、彼女の声が耳に響いてくる。裏・智恵子抄とでも言うべき作品。才気あふれる溌溂とした智恵子が次第に狂っていく。光太郎の理想に追い詰められていく智恵子が悲しく愛おしい。
 やってみたい作品?確かに。でも、出来ないな。あまりにも大竹しのぶのイメージが強烈で、その幻影が自分の中から取り除けない。稽古場では出来ても、お客様の前ではね。無理、今は。
 後輩達が既成の戯曲をやるときに、ビデオを観たり舞台で観たものをやろうとするのが私には分からない。それを超えるものを出来る自信があるのか?自分ならこうする、もっと面白く出来る。よっぽどの自信がなくては出来ないと思うのだが。発表会ならともかく、公演を打とうとする。わからん。戯曲だけを読んで、一から作り上げるのなら分かるのだが…。
 と、そんなことも考えながら、読みふけって、…って場合じゃないよ。今日は稽古だ稽古。まだ解決できていないところがある。どうやっていいのか、まだ分からないところがある。台本読み直し読み直し。