「稲穂だけ、いただけませんか?」
今年、ひょんな事で知り合いから注連飾りをいただいた。水引の鶴の付いた、大振りなもの。ありがたく使わせていただく。
・・・が、ん〜、なんか物足りない。
稲穂が付いていないよ。
いつからだろう、注連飾りに稲穂が欠かせないと思うようになったのは。注連飾りを飾ってしばらくすると、玄関でコツコツカサカサと音がする。雀たちがやってくるのだ。まるで、お正月の神様の先触れのようで、嬉しくなって、だから、「稲穂が無くっちゃね」と思うようになっていたのだ。
どうしようかなぁ。
こちらに来て最初のお正月である去年、驚いたのは、年末になると注連飾りを売る屋台があちこちに建ったことだった。注連飾りの形が違うことも驚いたが、その風景がとても新鮮だったのだ。その場で組み合わせて売っている。あ、関東風はとっても派手です。
聞いてみようかなぁ。でも、威勢の良い職人らしきおっちゃん達にちょいと気後れ。と、郵便局近くの屋台は、優しそうなおばちゃんが表に立っていた。傍らには稲穂の束も見える。
「稲穂だけ、いただけませんか?」
手短に事情を説明すると、
「いいわよ、持って行きなさい。」
手早く新聞紙に来るんで渡してくれた。嬉しいなぁ。そのまま離れるのは勿体無くて、少しお話を聞いてみる。屋台を出しているのは鳶の人達だと言うこと、注連縄の青い藁は稲が出来る前に刈らなくてはならないこと、知り合いの農家さんに頼んで特別に用意してもらうこと、スーパーなどで売っているものは稲以外のものに青い色をつけているものもあること、海老の飾りは下の干しわかめとセットで滝登りを表すこと・・・あれこれあれこれ。
聞いてよかったな。来年は、屋台で買ってみるかな。
いただいた立派な稲穂、さっそく、玄関の注連飾りにちょちょいと差し込みました。