川島むーのお茶祭り日記

お茶祭り企画代表、川島むーの心に映り行くよしなし事を、あれこれと

読了『空の中』(有川浩 角川文庫)

 自衛隊三部作の2作目。え?なんで2作目から読んでるの?まぁ、色々、事情はある。

 昔、小説は内容で読んでいた。内容がいい、このシーンがいい。このキャラクターがいい。
 最近は、ここの表現好き、この文章が好き、と言う読み方もしているんだなぁと思う。

 で、『空の中』。
 冒頭で描かれる、二つの飛行機事故。それぞれのラスト数行の表現が、好きだなぁ。永遠に思えるその一瞬、取り戻せない、その重さ。

 と初っ端でつかまれたおかげで、えらい勢いで読んでしまいました。
 国産飛行機については、福岡の劇団、ギンギラ太陽'sの「翼をくださいっ!さらば YS-11」を観ているだけに(終戦後、飛行機を作ることを禁じられたことなども描かれておりました)、国産飛行機「スワローテイル」にこだわる人の思いが、すっと胸に落ちて来たのでした。

 しかし、未知との遭遇話だとは思わなかった。この、生命体が良いね。彼(?)の文体をちょっと真似して遊んでみたのだが、難しいわ。概念によって存在する生命体。これは、小説ならではの設定だ。小説だからこそ、リアリティを持つ。そんな気がする。はしゃいだり、いじいじしたりしている「フェイク」は、愛おし過ぎて、痛々しくて。「フェイク」と「ディック」の対比。それは、主軸になる二組のカップル(大人カップルと子供カップル)の対比にも繋がる。
 全編を通じて、大人と子供が対比されている。子供の持つ力と、一方で、その至らなさ。大人がしっかりしていないといけないんだよ、と言われている気がする。そして、年寄りと言う存在の確かさ。難しい言葉は使わず、確かな言葉を語る宮じいの存在が、物語を支えている。
 いい、話だ。ちょっと、春名さんが出来過ぎやろ!と思わなくはないが。

 それにしても、登場する企業名「川嵜重工」とか「三津菱重工」とか、これ、仮名にした意味あるのか?と笑ってしまう。

 あとがきには、二組のカップルが登場する理由が書かれていて、これが面白い。こういう動機だってあるんですよ、と言うのがね。ふふふ。


 
 しかしなんで私はこの話を読んだ段階で気が付かなかったかなぁ。ラストに「Fin.」ってついているんだぜ。新井素子さんが解説書いているんだぜ。その事を意識せずに、勢いよく読了した勢いで、自衛隊三部作の一作目『塩の街』を読みだしてから、あれ?と思っているんだから。え?何が?……それは読了『塩の街』で書くことにしよう。