川島むーのお茶祭り日記

お茶祭り企画代表、川島むーの心に映り行くよしなし事を、あれこれと

震災休み

「あの時は、自主公演の練習中で、もう一度皆に会えたのは、一ヵ月後で、あ、震災休みがあったから」

 震災休み、か……。


 今日は、フェニックス・プロジェクト(被災地の舞台芸術家を支援する事業)による催しへ。
 相馬市の相馬高校と郡山市あさか開成高校と東京の新宿高校の演劇部の作品を見せていただきました。
 上演の後には交流会と言う形で、作品制作に関する話なども聞いて。震災休みは、その交流会で出た言葉。


 子供達に、ガツンとくらわされましたよ。涙が止まらなかった。

 相馬高校の作品は、3人の女子高生の話。『今伝えたいこと(仮)』。重かった。重いままのエンド。芝居も決して上手くはない。でも、そこには彼女達の抱える不安がストレートに言葉にされていて、胸が痛かった。結婚・出産と言う事への不安。どれだけの重荷をおわせてしまったのだろう。
 交流会で彼女達は言う。
「明るく希望を持って、と言う話ばかりになっているけれど、私たちは、今も不安なんです。怖いんです。この気持ちを知ってもらいたいからあえて、重いままにしました」
 エンタメ流行・コント流行の昨今。何も無ければ、彼女達も明るく元気のいい演劇をしていたのだろうと思う。重いものはそっぽ向かれがちなのも承知していて、でも、だからこその決意。そして、1年生が演劇部員として多くの事を学ぶ春の大会が、会場が警戒区域内であるために中止となったと言うこと。部員としての成長する機会を逃してしまったと言うこと。その事にも、胸が痛む。

 あさか開成高校の作品は、一見すると、真逆。演劇部員の群像劇。即興劇として作ってきた物をまとめたと言う。元気いっぱい。ん〜、いや、これは、台本もいいものになってました。オープニングの光景が、ちゃんとラストシーンに繋がっていて、上手いなぁ。演技自体も上手かったし。今どき作品らしく、笑いもいっぱい。でも、その芯の所にあるのは相馬高校の作品と同じ。「この青空はほんとの空ってことでいいですか?」千恵子の言う本当の空。今のこの空は、本当の空なのか。マスクをしていなくてはならない、線量計の数値を気にしなければいけない空気。不安。

 どちらの高校生も言う。私達の言葉を誰も聞いてくれない。大人達だけで話が進んでいる。避難することも避難先も、自分で決める事は出来ない。その苛立ち。腹立ち。
 それでも、生きて行こうと踏み出す一歩。その尊さ。
「バルタン星人は核実験のせいで自分の星に住めなくなった」「その手はピースサインをしてる」「落書きをしていたノートが机の上で開きっぱなし。それをいつか、閉じに帰りたい」
 
 明日、3月11日も笹塚ファクトリーで同じ作品の公演があります。全国の高校生の100文字メッセージのリーディングもあるそうです。それを読み上げる事になっている東京の高校生の、交流会での発言。
「今日、ここで福島の高校の作品を見て、自分の認識の甘さを思い知らされました。リーディングが今日でなくて良かった。明日までに、もう一度良く考えます」
 若者の、なんと柔軟な事か。そこで見せられた事をちゃんと受け止め、認め、次に向おうとする。こんなに素直に言葉を発する事が出来る、その心に、私は再び涙。

 いや、泣いてる場合じゃないなぁ。どうするよ、大人。もう、十代にやられてしまった一日でした。
 この土日は、あっちでもこっちでも色んな催しがあり、お誘いもあり、どうするのか迷って選んだフェニックス・プロジェクト。行ってよかったです。ありがとう。


 ここ数日、ずっと思っていた。一年前の今日に戻りたい。こんな恐ろしい事が起きると思いもしなかった、何も知らず、ただ楽しかったあの日に。
 阪神淡路の時に抱えたその思いにようやく自分の中でけりをつけたところで、再び同じ思いを抱える事になるとは思わなかった。いつか来ると思いながら、覚悟も備えも足りなかった。
 もう、一年前を振り返っても、帰りたいあの日ではない。今から出来る事、やるべき事。活動期に入ってしまったこの大地の上で生きる、覚悟。3月11日です。