川島むーのお茶祭り日記

お茶祭り企画代表、川島むーの心に映り行くよしなし事を、あれこれと

21年

 21年目の明け方、西に向かって黙祷。

 普段は遠い出来事になっていても、今日ばかりは……テレビで当時の映像を見ると、あの時のざわざわした感覚が蘇る。
 そう言えば、翌日の夜はどうにも寝付けなくて、両親の部屋で寝たんだ。いい年をして、と思いつつ。しばらくは、ふっと、目が覚めると6時前とか。体内時計のどこかに刻まれてしまった記憶。
 東日本大震災を経験して上書きされたかと思っていたけれど、結局のところ、自分の中に残っている傷としては、やっぱり、阪神淡路の方が深いのだなぁと思う。あの瞬間に、馴染んだ風景が壊れ、何千と言う命が失われた事が、あまりに生々しかったのだ。
 今、心配になるのは、首都圏。東日本を経験したことで、あれだけのことがあったけど大丈夫だったと思ってしまってないか?直下型の揺れは、違う。おそらく、起こる被害も。
 学童保育の指導員研修で防災センターに行った際、阪神淡路型の揺れを体験した人達が「え?え?」となっていた。まだ、東日本の揺れの記憶も残っている頃のこと。
 いつか起こるであろう都市直下型を、恐れていては何もできない。だからと言って、考えないと言うのも……。備えを、心構えを。
 だから、旦那よ、寝る時にメガネをむき身で置いておくのはやめてくれ、と思うんだがなぁ。ケースに入れようよ。近眼夫婦。メガネは命綱だぞ。
 毎年のことですが、あの日への鎮魂と、自分への戒めのために、この詩。今年は、先日の「なんかやる夜」で詠ませていただきました。
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 「 センチメンタル じゃあに〜 」
1948年、戦後復興期に
北陸を襲った大地の揺れを知る人は、少ない
その日 (1948年6月28日)
ある家では、長男が帰ってこなかった
死者・行方不明者3769名の一人
終戦で拾った命、わずか3年
もしも長男が戻っていたら
次男が家を継ぐことは無かったろう
その妻が雪深い地で暮らす事も無かったろう
その息子はどこで生まれどんな風に育ったろう
それは、私の夫となった人の家族の物語
ある日、舅に似た老人がふいに訪(おとな)う、それは夢物語
忘れない
1月17日と言う日
あの朝を
忘れない
 遠く地の底から、何者かがせり上がり迫ってくる気配
 地鳴り、地響き
カタカタと言う音
ずん!
 突き上げられ
揺すられ、揺すぶられ
動けない
 壁が柱が本棚が、きしむ、音
 暗闇の中、「止まって止まって」、心の中で叫び続けた
忘れない
 役立たずの私の備え
 転がって、手が届かなかった懐中電灯
忘れない
 冷静だった父母の身の処し方
忘れない
 公衆電話に並んだ近所の人たち
 震えていたのは寒さの所為だけじゃない
忘れない
 母の故郷、東灘
 無事だった、伯父一家の家
 倒壊したお隣さん
 焼け野原の商店街
 いとこと遊んだ公園に並ぶ、仮設住宅
忘れない
 妹が通う大学の街
 「999の駅みたいで格好ええやろ」
建築科で学ぶ妹のお気に入りだった駅舎
忘れない
 「2月は、南京町春節祭行こな」
 実行できなかったデートプラン
忘れない
 やっと電話が通じたお調子者のあいつの、震える声
 「今行ったる!」口走っとったら
焼けぼっくいになっとったかな?
忘れない
 非常勤勤務先の高校
 私を囲み喋り続けた生徒達
 包帯を示しながら、それでも笑いを交える
あっぱれ関西人のやんちゃくれ
 みんなで笑うたなぁ、
・・・徹マンしとったって、呑気な3年生やなぁ・・・
忘れない
 枕元で砕けたガラス細工
神戸元町のガラス屋さん
出かけるたびに買うとった
忘れない
 風景が、
壊れると言うこと
あの日、何かが少し違っていたら
いとこが寝る場所を変えていなかったら
 倒れていた箪笥
時間が出勤時だったら
 通り一面のガラス片
図面書きの仕事中だったら
 作業机に落下していた図面引き出し
 ・・・直撃ですがな
恋人の伊丹出張が続いていたら
 ひしゃげた駅舎
妹が大学に行ってる時間だったら
友達の下宿に遊びに行っていたら
身近に死んだ人がおらんかったんは
ほんの偶然
慰霊碑に刻まれた名前に涙しとったのは私かもしれん
刻まれたんが私やったかもしれん
知っている
 あの日をきっかけに人生をかえた人を
 しまっていた夢に光を当て
 我から厳しい道に踏み出した人を
私?
問われれば、私もやっぱり、この日があるから
時に決意が鈍り、甘え、だらしない日々が続いても
嫌でも毎年やって来る、この日
突きつける
ちゃんとやっとるか?悔いは無いか?
一年でたった一日
心の中であの日を、あれからの日々を、辿る
センチメンタル・ジャーニー
年がら年中センチメンタル、じゃあないの
たった一日、大切に、もの思い過ごす日
進むために振り返り、足元を見つめ大地を見つめ、立つ
立ち位置を確かめる
この日、私はゆるんだタガを締めなおす
そうして明日がやってくる
人々が、それでも新たな日を迎え
前に向かって進みだした日々に
私も顔を上げて
センチメンタルな気分に、じゃあね!