川島むーのお茶祭り日記

お茶祭り企画代表、川島むーの心に映り行くよしなし事を、あれこれと

ロスト北斎

 録画してあった、NHKの『ロスト北斎』を見る。
 関東大震災で焼失した巨大な肉筆画を、唯一残された白黒写真をもとに復元するプロジェクト。
 世代もバックボーンも違う技術者達が、互いの持つものを尊重し、信頼し、意見をぶつけて渡り合い、そして、肩を並べて北斎のすごさにため息をもらし、大きな仕事を成し遂げる姿に、ちょっと泣きそうになる。
 ああ、やはり、すみだ北斎美術館に、行かねば。
 そして、思うのだ。
 世の人々よ、北斎の肉筆画を見て下さい、と。
 浮世絵も良いけど、あれは、北斎と言う画工と、彫り師、刷り師の共同作業。それももちろん素晴らしいのだけれど、生の筆遣いを見るには、やはり、肉筆画なのだ。
 北斎の息遣いまで感じられそうなあの肉筆画を見ると、いつも心が震える。富や名声、誰かに認められることではなく、ただひたすらに、真の画工たらんとした、90にしてなお、更なる高みを目指した生きざま。
 もしもゴッホが、浮世絵だけでなく肉筆画を見ていたら、どんな風に受け止めていただろう。