『マシアス・ギリの失脚』(池澤夏樹・新潮文庫)
初、池澤夏樹。
分厚い一冊。字はみっしりだし、時間がかかりそうだな、と言う印象。読み始めは重厚な政治小説?架空の南洋の島国が舞台。かつて日本の植民地であった島。日本に暮らしたこともある大統領マシアス・ギリが失脚するまでの物語。
やっぱり重い話か、と思っていたのだが、あれ?もしかして、これはファンタジー?と思わせるのが、要所要所で挟まれる、バス・リポート。
気が付くとさくさく読み進め、読後感は、なぜか一陣の風、爽やか。マシアスの失脚、その幕引きは悲劇でもあるはずなのに。登場人物一人一人が愛おしい。バスも愛おしい。
架空の国の話しだが、日本との歴史・関係、それは現実とも重なる。国際情勢等、この国が実際にあるのではないかと思わせるリアリティ。
一言で言うなら、面白かった。重さと軽さが絶妙。
「エンタツです」「アチャコです」……いや、ここで吹いちゃいましたよ。これを入れてくるセンスに「あ、この作家、好きかも」と思ったのでした。
『ビブリア古書堂の事件手帖 (5) ~栞子さんと繋がりの時~ 』(三上 延・メディアワークス文庫)
4巻で栞子の母が登場。今回も裏でちらちらと。テレビドラマ版のキャストはなんだかなぁ、だったのだが、この母だけは、ドラマの安田成美さんのイメージが離れませんでした。
手塚治虫「ブラック・ジャック」にまつわる話。依頼者の親が、もろに同世代。リアルに『ユニコ』の映画を観ておりますよ。パンフも持ってるぞい。
栞子の抱える不安を、あっさり一言で吹っ飛ばした大輔君はさすが。本人はそんなすごい事を言ったつもりが無いって所も良いな。
ふんわりあま〜い、で終わるかと思えば、来た。来ましたよ。来ちゃいましたよ。結局、次巻も気になる訳です。