『永遠のクリスマス』
「買って〜、誰か私を買って〜」
「よ、社長、太っ腹!」
「お兄さ〜ん、男前!サービスするよ」
「ちょっと、なに見てんのよ。用が無いならどきなさいよ。
商売の邪魔よ。ふん、嫌味ねぇ、その薬指の指輪!」
クリスマスの夜の街角で、
なんでやろ
喧嘩を売られてしもた
ゴテゴテと身を飾り
甘ったるい化粧の彼女
あっけにとられている私に
まだまくし立てている
「いい気なもんよね、人間の女は。クリスマスケーキ、なんて言って、え、24で値崩れ起し、25で半値以下、26過ぎたらもう売れない、って、んま〜っ、随分な例えに使ってくれるじゃない。
でも、だからってあんた達はほんとに捨てられるわけじゃないでしょ。チャンスだってあるんでしょ。でもね、私たちは、ほんとに、ほんとに、ぽいよ、ぽ〜いってね、ね、ちょっと、聞いてんの?」
クリスマスケーキにしては
随分古い例えを知っている
確かに子供の頃には
そんな言い方もあった
大人になる頃には
「大晦日まで大丈夫」という言い方に
近頃では、死語である
その計算で行くと
私は大晦日も過ぎて
明けて正月一日にめでたく結ばれ
もう、何回目の年越しやろ・・・
「いやだ、やめてよ。そんなものくっつけないでよ。ね、ちょっと、店長!」
気が付くと
30%オフの張り紙をひらひらさせて
ケーキは更にご機嫌斜め
華やかなクリスマスの街の真ん中で
彼女は、売れんやろなぁ
無理やろなぁ
うん、ここは私が買うてやろ
・・・売って、・・・もらえるんやろか・・・
永遠のクリスマス
樹脂で出来た
サンプルのケーキ
【解説】
こうやって文字にすると、誰も、詩とは思わんな。
2003年の詩のボクシング大阪大会の決勝戦。即興詩のお題は、池上さんが「雑煮」、私が「クリスマスケーキ」であった。3分という時間の中で搾り出したのが、かつて言われたクリスマスケーキと言う例え。で、自分はお正月になっちゃったよと。(ここで、先攻の池上さんのお題「雑煮」を利用。後攻は、少し有利やね)
で、終わった直後に「買って〜、誰か私を買って〜」と言うクリスマスケーキの声が聞こえてきた。あぁ、これやったか、と思ったわけだ。そんなこんなで、その後まとめたのがこれ。完全に朗読用。おまけに季節ものだから、読んでやれる時期は限られている。
今年は、似たような路線でクリスマス用のを新たに作ってしまい、先日のコモンスケイプではそっちを読んだ。と言うことで、完全にいじけているクリスマスケーキ。少し、明るいところに出してやることにした。
とは言え、3年も前のもの。まだ、書くことに再会したばかりの頃の作品。賞味期限が過ぎています。ご注意下さい。
ちなみに、私の中では「モノ語り」と読んでいるシリーズ。見捨てられたモノ、忘れられたモノに寄り添ってみるシリーズ。ま、たいてい、ぼやいてますな。