『塩の街』(有川浩 角川文庫)
自衛隊三部作の第一作。そして、作家・有川浩のデビュー作である。
人間が塩と化すと言う謎の塩害が広まる中、ひっそりと生き延びていた少女と男は「世界を救う」事になるのか。キャッチコピーは「世界が終わる瞬間まで、人々は恋をしていた」。
デビュー作だから、ちょっと今の有川浩作品と違う感じがするよ。と聞かされていた。
確かに、渋いおっさんが出てこん!……って事じゃなくて。
なんだこれは〜。読み始めて、激しくデジャヴュ。懐かしい。この感じは……
新井素子や〜!!
なぜ気付かなかった私。有川浩作品の最後にfin.と入っているじゃないか。有川浩は 1972年生まれ。新井素子を読んで育った世代だわ。(読了後、検索。やはり、新井素子に憧れていたとのこと。)
一人称で書かれている訳では無いのに、どこだ、共通するのは。
あり得ない事態で突然世界が終わりになると言う設定の中、主人公が様々な人と触れ合っていく。これは、『ひとめあなたに…』。まっさきに、この作品を思い出したよ(同時に『宇宙魚顛末記』も思い出す。作品タイトルをすぐに調べられるのが、ネットのありがたさ)。
違うのは、有り得ない事態が有り得なくもなさそうなリアリティー。ミリタリーもののハードさ。容赦の無い厳しさ。
その点では、栗本薫的な匂いもする。大好きな短編集「時の石」の中の『黴』や『BURN(紫の炎)』に近いものを感じる。特に『黴』は、世界が黴に侵されていく話。人の口を開けたら、中が黴で真っ白と言うシーンが忘れられません。
と言う事で、一気に十代を思い出させてくれた『塩の街』でした。
もちろん、有川作品。歳の差恋愛のキュンキュンするような恥ずかしさや切なさも描かれております。
あ、おっさんも、出てきました。後日譚『塩の街、その後』で。
ああ、しかし、お蔭で、十代の頃に書いていた小説が甦って来たじゃないか。もう、書いたことを忘れたいぐらい、恥ずかしい思い出なのに〜。やめいやめい、お前たちの名前自体が、もう、たまらなく恥ずかしいんだ。私の頭の中で遊ばないでくれ〜。