いかなごのくぎ煮は、阪神淡路大震災で被災した人達が、支援へのお礼として全国に送ったことで知られるようになったもの。
11年前の今日、横浜暮らしの関西人の我が家へ、母から届いた荷物の中にはお約束のように、くぎ煮。「春はこれがなくっちゃ」と、ウキウキしていた。
その数時間後に起きた東日本大震災。「楽屋」の稽古に向けてのウキウキした気分は吹っ飛び、夫は帰ってこれず、停電の自宅でひとり。
ガスは使えるけれど、何かを作る気にはならない。
くぎ煮があることを思い出したのはいつだったか。この先どうなるのか判らない不安のなか、甘辛いその味を噛み締めた。
11年。復興支援のカレンダーは、今日を忘れないため。
大阪に戻ることになった2016年に訪ねた浪板で出会った、問わず語りにあの日のことを語ってくれたご婦人は、元気でいるだろうか。